ゲーム性の発見方法(妖精さんの活用方法)

この記事は,Board Game Design Advent Calendar 2014の第7日目の記事として書かれました。

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篠原遊戯重工の篠原と申します.
過去作品は「うそつきばかり」,「Xing(バッティング)」,「クルリア」,「コバンいただき」の4作品です.

第5日目の記事で操られ人形館の常時次人さんが
「朝起きたら妖精さんが来てシステムの骨格が出来ていたので、後はテストをするだけだった!とはなかなかいかないでしょう。」
と書かれていたので,僕は妖精さんに働いてもらう方法について書こうと思います.


さて,ボードゲームのルールの根幹を1つ作るのにどれくらい時間がかかるものでしょうか.
僕はだいたい半年ほどかかるようです.ただし,この半年の中で一番本質的な時間は5分程度です.言い換えれば,ボードゲームのルールの重要な部分は5分で作れるということです.ゲームを作っている作業の中でこの5分間が一番楽しく,興奮する瞬間です.この瞬間のためにゲームを作っていると言っても過言ではありません.ゲーム作りの中の最も大きな報酬だとも感じています.
この5分間のことを妖精さんの仕事としています.

妖精さんは何もしないで勝手に仕事をしてくれたりはしません.妖精さんが働きやすい環境を整える必要があります.


まず,妖精さんにやってもらいたいことをはっきりさせましょう.
ゲームを作る上で必要な工程はたくさんありますが,アイディアの発見フェーズと,アイディアの解決フェーズの二つに分かれると考えています.数学で例えると,数学の問題を作ることと,その問題を解くこととに対応しています.アイディアは方向性やテーマと言い換えることもできます.どちらのフェーズも重要ですが,まずは解くべきアイディアがないと話が進みません.
また,ただアイディアがあればいいわけではありません.より筋の良いアイディアである必要があります.
妖精さんにやってもらいたいことは,この発見フェーズでより筋の良いアイディア(方向性,テーマ)を見つけてもらうことです.

あるアイディアが筋が良いかどうかを判定することは簡単です.そのアイディアを解決した試作をテストプレイした時に出てくる様々な改善案を,特に悩むことなく取捨選択できるようであれば,それは筋の良いアイディアです.どの改善案も甲乙つけがたい場合は,解決しようとしているアイディアがまだ十分な品質に達していない可能性があります.

妖精さんが降りて来やすいように発見フェーズで僕が実践していることは以下になります.

  1. 空き時間に楽しさや面白さにつがなりそうなアイディア(部品)がないかを探し続ける.メモはとらない.
  2. 見つかった良さそうなアイディア(部品)を頭の中で組み合わせてみて,良さそうなアイディア(集合体)にならないか試し続ける.メモは取らない.
  3. 良さそうなアイディア(集合体)を3つくらい同時進行で考え続ける.それぞれを組み合わせたりバラしたりを繰り返す.メモは取らない.
  4. 行き詰まりを感じたら考えるのをやめて意識から外す.メモは取らない.
  5. 上記を繰り返す.

発見フェーズで大事なことは常に考え続けること(頭の中にアイディアを常駐させること)です.このフェーズではメモを取る必要はありません.メモを取るという行為は時間がかかりすぎますし,メモを取ってしまうと安心してしまい,頭の中に常駐させることを怠ってしまうからです.
メモを取らないと忘れてしまうという不安があるかもしれませんが,気にする必要はありません.メモを取らなければ忘れてしまうようなアイディアはさして重要ではないのです.本当に重要なアイディアは忘れようとしても忘れられないものなのです.


■アイディア(部品)の例

  • ドアを開けようとしたら反対側にも人がいて同時にドアを開けようとした.そして同時にドアを開けるのをためらった.これは何かゲームに使えないか?
  • ペットボトル専用の中身が見えないゴミ箱にペットボトルを捨てたら,音で缶が混ざっていたことに気づいた.これは何かゲームに使えないか?
  • バスに乗っていた子供が手を振ってきたから手を振り返したら,実はその子は僕の後ろの人に手を振っていた.これは何かゲームに使えないか?


■良さそうなアイディア(集合体)の例

  • プレイヤー数ー1の枚数の手札を全プレイヤーが持つ.各プレイヤーは自分以外のプレイヤーの前に手札からカードを表にして1枚ずつプレイしていく.最終的に自分の前に集まったカードの組み合わせで得点が決まる.交渉あり.
  • 各プレイヤーは5色の小さなボールが複数入った袋を持つ.プレイヤーは手番にAかB,どちらか1つを行う.

  A)自分の袋から任意のボールをつかみ出し,一番数が多い色のボールと,二番目に数が多い色のボールを確認する.どちらか片方の色のボールを全て得点として消費し,残った色のボールを共通の場に出す.数が三番目以降のボールは自分の袋に戻す.
  B)共通の場から一色全てのボールを自分の袋に入れる.

  • 大中小3種類のキューブが,それぞれ4色に塗り分けられている.プレイヤーはキューブを積み上げてタワーにしていく.タワーは複数存在できる.小さいキューブの上に大きいキューブを積むことはできない.各プレイヤーは手番で,手持ちのキューブをタワーの一番上に積むか,タワーの一番上からキューブを下ろして手持ちとするかのどちらかを選んで行う.勝利条件は検討中.


上記をだいたい半年くらい続けると,突然妖精さんが舞い降ります.そして5分程度で筋の良いアイディア(方向性,テーマ)を作って去っていきます.これまでですと,散歩中・シャワー中・寝起き(夢の中)で妖精さんはお仕事をしてくれました.今も次の妖精さんが舞い降りるのを待ち続ける日々です.


最後になりますが,ゲームを作るというゲームはとてもとても面白いので,まだ遊んだことがない方はぜひ一度遊ばれてみることをお勧めします